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楽しく老いる1

 しばらくの間、話が固くなってしまいました。人間、いつもしゃちほこばっては生きていけません。このあたりで、ふっと肩の力を抜きたいと思っています。

 そもそも私がこのような文章を書きたいと思ったのは、ひとつの手本があったからです。

 一九八八年のことです。たまたま入ったシアトルの書店で、横積みになった本を見かけました。ベストセラーだそうです。タイトルは Brown’s Guide to Growing Gray. 「ブラウン式加齢法」、もう少しくだけていうなら、内容を取って「ブラウン式―楽しく老いる法」

 ちょうど五十五歳で一応の退職をして、次の職場に移ったときでした。読んでみると、年を取ることを笑い飛ばしている。なんともいえぬ快感がありました。

 ちょっと内容をのぞいてみましょう。

 例えば、第六章のタイトルは、It’s Not Over Till It’s Over.「終わるまで、終わってはいない」です。

 なんとここには、あの「千の風」の詩が載っています。今からやく二〇年前のことです。やはり作者はわからぬと書いてあります。

「私の墓の前で泣かないでくれ。私はそこにはいない。私は死んではいない」

 続けて、「避けられないものに腹を立てようが、諦めの境地になろうが、それはその人の勝手です。しかし、(夕暮れの)影の長さをいつまでも嘆いて、時間をむだにしてはいけない」と書いてあります。

「気楽に生きよう。借金取り(あの世の便り)が何かの都合で遅れているときに、わざわざ借金取りが来るのを待つなんて、ばかげたことは止めましょう。野球監督のヨギ・ベラは言ったじゃないですか。『最後の球がグローブに入るまでは、試合はまだ終わっていない』」

 この章の余白には、「千の風になって」を、私なりに一生懸命に考えて訳して書いていました。もともと、この歌は「私は生きていますよ」という楽しい歌なのです。

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