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楽しく老いる2

 「驚いたのなんの。いや申し訳ないやら、恥ずかしいやら。

 パーティで、なかなかキレイな女性に出会ったのです。どこかで会ったことがる。取り留めのない話をして、翌朝よく見ると、私の隣で寝ているではないですか。なんと、その人は、私の妻だったのです。」

 思わずクスクスと笑いました。電車のなかですから、隣の人が、何が起こったのかと私を見ています。

 「忘却よ、ありがとう」とブラウン氏は書いています。「このようなすばらしい経験は、歳をとってからでないとできません。忘れることを楽しむことです。」

 どうです。この心意気は。

 「短期の記憶は忘れやすい。それは長期の記憶を保存しておくために人間に備わった自然の摂理です。」

 そういえば、例えば、「何々の歌が懐かしい」というときには、その歌そのものがよいだけではなく、その歌を一生懸命に聴いた、あるいは、歌ったときの自分の青春を思い出しているからでしょう。

 あるいは、年を重ねて、新しい解釈ができているのかもしれません。私は和歌山で勤めているときに、あることに気づいたのです。

 春になって、有田のあたりから先に行くと、両側にある山の斜面が真っ白になるのです。そして、なんともいえぬ甘酸っぱいよい香りがしてくるのです。そうです。みかんの花です。

 終戦後まもなく(昭和二一年)爆発的にヒットした「みかんの咲く丘」、川田正子の声がさわやかでした。そのとき、私の頭にはただ、白い花が咲いているという白色しか頭になかったのです。しかし、そこには甘酸っぱい匂いがある、そのことに気づきました。歌を聴きながら、匂いを思い出す。いいですね。

 もっとも、ときどき肥溜めの臭いもしてきましたが。

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